3月1日(金)シネスイッチ銀座にて、作家の林真理子さんをゲストに迎えた『マイ・ブックショップ』のトークイベント付き試写会が行われました。
『マイ・ブックショップ』の舞台は、イギリス東部、本屋が一軒もない小さな海辺の町。戦争未亡人である主人公のフローレンス・グリーンは、夫との夢だった書店を開こうと奮闘するが、保守的な空気が漂う町の中で様々な障壁が立ちはだかる…というのが本作のストーリー。作家の林真理子さんが育った山梨の町も本屋が三軒しかなく、そのうちの一軒は実家が営んでおり、子供の頃から手伝っていたという。
『暮れになると思い出すのは、家計簿の付録がついた婦人誌がとにかく売れるので忙しかったこと。本屋は決して優雅な仕事ではありません。母親は70歳まで本屋を続けていましたが、働く姿を見ていつも大変だと思っていました』
自身が本屋を開こうとするならどんな本屋?という問いには、
『嫌です(笑)。だって重労働ですもの。あとは銀行もお金を貸さないし、やっぱりこの時代にやっていけないと思う。ウチの近所にあった本屋もなくなってしまったのですが、私が好きな戦争関係などの本がいつも置いてあったんです。後々店主に尋ねたら、林真理子が買いそうだからと(笑)。近所の方の色んな嗜好に合わせて揃えてたんです。お客様がどういう本を買って行くかなんて、もうこれは本屋のトップシークレットですよね。』
出版業界も不況の時代が続き、本離れとも言われる中で、本と文学への純粋な愛が満ち溢れているこの作品は、新たな世代へ文化や芸術がもたらす価値を示している。
『人は孤独を嫌がることも多いが、本を読んでいる時間は孤独ではない。人に与えられた最良の時間だと思っています。』と林真理子さんは言う。
『ここまで本への愛おしさが込められた映画はない。この映画の時代には日常的だった、本を読むことが尊敬できる社会であって欲しい。日本にはまだ本による文化が育まれている。不遇の時代だけど、なんとか頑張って欲しい。』
本と文学への愛はもちろんだが、林真理子さんは別の見所も挙げる。
『フローレンスの着ている日常着が本当におしゃれ。ビル・ナイが演じる老紳士が着ている仕立ての良いコートも。フローレンスを家に招いた時もジャケットにネクタイをして出迎えるなんて、本当に素敵。日用品などの小道具や街並み、景色など、イギリスらしい雰囲気が随所に味わえます』
3月9日(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開
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