19世紀後半、英国ではヴィクトリアンゴシックと呼ばれる中世インテリアの復刻がブームになります。産業革命により物作りの機械化が進む中、中世の手仕事に回顧を求める人が続出したのです。そんななか、家庭のインテリアとして人気を博したのがタイルです。最初は水回り、そして装飾が豊かになると、家の至る所にタイルが多用されるようになります。ウェッジウッド社や、ロイヤルドルトン社、ミントン社など衛生陶器を手がけていた多くの陶磁器会社がタイル製作に勤しみました。
ミントン社のタイルは、建築家ピュージンに愛され、英国国会議事堂の床に使用されました。19世紀後半に活躍した工業デザイナーのクリストファー・ドレッサーはミントン社のタイルのデザインを手がけ、自身の作品にもミントンタイルを多用しました。日本で活躍した英国建築家ジョサイア・コンドルも、湯島の旧岩崎邸の暖炉や玄関、ベランダにもミントンタイルを使用しています。また、ロイヤルドルトン社のタイルはハロッズデパートのフードコートに採用され、現在もその美しさで買い物客を喜ばせています。
愛知県常滑市にあるINAXの「世界のタイル博物館」には、日本屈指の装飾タイルの研究家であった故山本正之氏のコレクションが保管されています。機会があれば、ぜひ素晴らしいコレクションをご覧下さい。写真はCha Tea 紅茶教室の階段に埋め込んだミントンタイル。全てアンティーク品になります。美しいタイルは100年以上の時を経て、現在も私たちの目を楽しませてくれています。
Photo&Text:ChaTea紅茶教室