イギリスで最も気候が良いとされる6月。「6月の花嫁は幸せになれる」との言い伝えもあり‘ジューン・ブライド’の月でもありますね。今回は、サファイアと王室の花嫁のお話をいたしましょう。
私たちは、婚約指輪というとダイヤモンドリングを思い浮かべますが、英国王室ではダイヤモンドの他にサファイアも婚約の際贈られる宝石です。
キャサリン妃のサファイアのリングは記憶に新しいところですが、1840年ヴィクトリア女王にアルバート公が贈ったのは、大きなサファイアのブローチでした。
結婚式の前日にアルバート公は、ヴィクトリア女王がいる居間に来てサファイアとそれを囲む12個のダイヤモンドのブローチをプレゼントしました。たいへん感激したヴィクトリア女王は、それを日記にも記しています。結婚式にも白いレースのウエディングドレスにダイヤモンドのイヤリングとネックレス、そして「最愛のアルバート公から贈られた美しいサファイアのブローチ」を身に着けて式に臨んだのです。
サファイアは、愛情・真実・誓い・貞節などを象徴する宝石としてローマ時代より婚約の証として用いられてきました。この慣習は現代ヨーロッパにも受け継がれ、ダイアナ妃やアン女王など王室の花嫁たちがサファイアの婚約指輪を受け取っています。ヴィクトリア女王に贈られた「アルバート公のブローチ」は、現エリザベス2世即位の際、女王個人のコレクションとして引き継がれ、今でも時折、女王の胸元で青く輝いています。英国王室のクラウンジュエルは、英国外に持ち出しが禁じられているので、通常の式典や外国訪問などの際には女王の個人コレクションからジュエリーが選ばれるのです。
英国王室のジュエリーが素晴らしいのは、アンティークジュエリーが‘アンティーク’ではなく、今でも現役で使われているところにあります。それは、何百年も前のジョージ4世やヴィクトリア女王が生きてきた証でもあり、彼らのジュエリーを身に着けるエリザベス2世やキャサリン妃が伝説の担い手である証でもあるのです。
これは王室に限りません。あなたの家族やあなた自身の物語を、大切なジュエリーに託してみるのは素敵なことではないでしょうか?
Photo&Text:
ジュエリースタイリスト、Antiques Violetta取締役。
青山 櫻