イギリスの家と言えば、美しく調和した街並みが印象的ですね。今回はその理由の一つについてお話します。
イギリスでは、その地域ごとに産出できる材料を上手に使って住宅が建てられてきました。たとえば、広大な森林のある地域ではハーフ・ティンバーと呼ばれる木造の軸組み壁の住宅が建てられ、粘土の採れる地域ではこれを使ってレンガを製造しました。石灰石と砂岩も大切な建築材料で、種類も多く、これらを使った組石造(そせきぞう)はもちろん、焼成した石灰に、砂と水を加えることによりモルタルや漆喰を作ることが出来ました。
古くからの家々が壊されることの少ないこの国では、材料の分布に対応した特徴ある街並みを、今でも見ることが出来るのです。
イギリスでは木造建築のスタイルを、構造面からハーフ・ティンバー、または色の対比からブラック・アンド・ホワイトと呼びます。一般には前者が有名ですが、ハーフ・ティンバーと呼ばれる理由は、木造軸組とその間を埋める材とがほぼ半分ずつだから、あるいは、軸組を構成する木材が丸太を半分に割ったものだから、とも言われています。さらには、上階(木造)と下階(ブリック等)で構造材が違うから、との説もあります。構法の発達に伴い、ハーフ・ティンバーは、その表面を覆われてしまったこともあったそうですが、近年、伝統的な木造軸組を露出し、その美しさを再び甦らせようという動きが盛んになっているそうです。イギリスらしいと思いませんか?
文&写真 : 小尾 光一(コッツワールド代表、https://cotsworld.com/)