Graham Thomas グラハム・トーマス
1983年 デビッド・オースチン作出
イングリッシュローズの中でも、最も有名な品種のひとつであり、英国の偉大な園芸家に捧げられたこのバラは、数々の賞を受賞し、作出当初から現在まで人気を博しています。ピュアイエローの花色にカップ型の花型は、作出当時大変珍しく注目の的となりました。香りは爽やかなティーローズ香があり、2000年には香りの良いバラに贈られる英国王立バラ協会「ヘンリー・エドランド・メダル」を受賞しています。また同年、バラの愛好家にもっとも喜びを与えたバラに与えられる「ジェームズ・メイソン賞」も受賞しました。更に、第15回世界バラ会議・バンクーバー大会では、41カ国の加盟国の投票によって「バラの殿堂入り」を果たしています。
今年6月に行って参りましたイギリス・ハンプシャー州・ラムジーにある「モティスフォント・アビー」のローズガーデンでは、このバラ「グラハム・トーマス」がいたる所に植栽されていました。1957年からモティスフォント・アビー全体の修復に関わっていたナショナル・トラストの庭園コンサルタントだったグラハム・トーマス氏は、当時のモダンローズの人気により、忘れ去られていたオールドローズたちを各地から探し集めて、このモティスフォント・アビーに1972年、ローズガーデンを造りました。また、園芸に関する執筆も多く、それらの功績から1975年に氏は、大英帝国勲位を授けられています。
また、デビッド・オースチン氏とも50年以上に渡る親交があったそうです。つまり、グラハム・トーマス氏の縁の場所「モティスフォント・アビー」に、縁のあるデビッド・オースチン氏作出のバラ「グラハム・トーマス」が、「シンボルローズ」として植栽されているわけです。
前置きが長くなりましたが、今回は、このモティスフォント・アビーの「グラハム・トーマス」と周囲の草花との色合わせについて注目してみたいと思います。
黄色に青
黄色に青紫
黄色に赤紫
黄色に紫
この様にモティスフォント・アビーでは、黄色と、黄色に対する補色の青色を中心とする色との組み合わせを多く行っていました。補色を用いると、お互いを引き立て合いながらも、心地良く見えると言われています。
また黄色に、同系色の茶色の背景のレンガがよく合い、落ち着きを感じさせてくれます。
自然と心地良いと感じるガーデンは、実はカラースキーム(色彩計画)がしっかり出来ているガーデンだということを改めて感じました。
文&写真: 元木はるみ(日本ローズライフコーディネーター協会代表、https://www001.upp.so-net.ne.jp/jrlc/)